精霊の愛し子
 「うるさいっ!!」

 図星をつかれてモルティナの中で何かが爆発した。

 「何が分かるというの!?知ったふうなこと言わないで!王族でもない、家族もいない貴方に何が分かるというの!?」

 空気は静まり吹く風が音を立てる。

 「分からないよ…」

 そう呟くエリミアの表情はとても辛そうで悲しそうだった。

 「エリミアッ」

 エリミアは冷たく言い放つ。

 「帰って。…二度とここには来ないで」

 エリミアはモルティナをおいてその場から立ち去る。

 『姫、あの女を始末するか?』

 エリミアを姫と呼び、姿を現したのは水の精霊。

 「それはダメだよミラ。一応王女様だからね」

 微笑むその表情はどこか暗く、顔色もいいとは言えない。

 「でも、結界は張ろうか」

 エリミアは精霊たちにお願いする。

 精霊が張る結界は人間が張るものよりも強力であり、簡単には破れない。

 それに加えてもう一つ。

 「入って来た人が奥に来れないように、入り口に戻る術もいいかな」

 エリミアを心配し現れた精霊たちは頷く。

 「あ、フラウ」

 エリミアは空中に向かって声をかける。

 先程風を吹かせたのは間違いなく風の精霊だ。

 『どうした、お嬢』

 「結界のこと、王室の精霊使いにも伝えて欲しいの」

 王室の精霊使いは姿は見えないが精霊の声を聞くことはできる。

 エリミアのことは知らなくても危険があった、ということだけを察してはくれるだろう。

 『分かったぜ!…しかしお嬢、大丈夫か?顔色が良くないぜ?』

 「今日はもう、家に帰って休むことにするよ。心配してくれてありがとうフラウ」

 『おう!じゃあオレは行ってくるな』

 フラウは風の渦で体を纏い飛んで行った。

 『じゃあ、私がエリミアと一緒に帰るわ』

 サクヤはエリミアに寄り添う。

 「ありがとうサクヤ」

 『ふふふ』

 『不本意ではあるが、我はあの女の監視でもしておこう』

 「ミラもありがとう」

 『うむ』

 ミラは川に戻って行った。

 『では行きましょう、エリミア』

 「うん」

 サクヤはエリミアの肩に座る。

 『後で闇と光の精霊を呼んでくるわ。少しは楽になると思うから』

 サクヤはどの精霊よりもエリミアのことを大切に思っていた。

 エリミアがまだ赤子の頃。

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