神無月の少女は眠る
王立ルナヴェリア魔術学院。
魔力を持つ人間のみが通える、国内最大規模の魔術学院である。
由緒ある学び舎の正面には庭園があり、真ん中にある聖水の噴水を囲むように『夢かなう』の花言葉を持つ青い薔薇が咲き乱れている。
その他、校舎の後ろにはクリスタルホールと呼ばれる集会所や、魔力回復などに使うポーションや、昼食を買うカフェテリアなどの施設がある。
生徒はここで三年間学業と魔術を学び、最後の一年ではそれぞれの夢に必要な魔術を集中的に学ぶ。
そんな魔術学院では、新しく八十人の新入生と、数人の教師を迎え入れる入学式を行っていた。
理事長や生徒会の言葉を終え、今度は新入生ひとりひとりの『属性』と『魔力』を測定する為に、理事長が詠唱を唱え空間移動を行った。
「えー、これから属性と魔力測定を行います。
この結果によってクラスを分けるので不正を行わないように。……まずは藍乃さん」
この学院では、他の学校よりも最先端の技術を使っていて、素早く、そして正確にそれぞれの属性と魔力の数値が分かるのだ。
魔力を測定する際は、金属製のブレスレットを装着し、その状態で自分の魔力を限界まで放つ事でブレスレットが魔力を感知し数値化する。
平均的な魔力を持った者だと五百で、教師に匹敵する魔力値は二千である。権力を持つ貴族や名家の血筋は五千を表す事もある。
その数値によってクラス分けがされ、上から順にSS、S、AA、A、B、Cの六種類に分けられる。
また、属性を判定する際は、詠唱を唱えてから神聖な水晶玉に手を触れる事でそれぞれの属性を表す色に変化する仕組みだ。
ほとんどの人は火、水、木、光、闇、そして時の六大属性からなる氷や花、雷や音などの属性に適正を持っている。
数分後、教師はその少女の名を呼んだ。
──神無月 瑠楓。王国の十二大名家のひとつ、神無月家の長女である。
その場にいた多くの新入生は、果たして神無月家の令嬢がどんな魔力数値、そしてどのような属性を持っているか、息を飲んで見守った。
「……魔力を放出、するんですね」
「ええ、そうですよ。限界まで」
白に近いクリーム色の髪に、黄金の光る瞳を持つその姿は一見神々しいが、彼女は怯えた顔で魔力を出そうとしない。
「……体調が優れませんか?」
「いいえ、そんなことは……」
新入生達の間で微かにざわめきが広がった。
瑠楓は震える手で金色に光るブレスレットを腕にはめ、魔力測定に集中する為に目を閉ざした。
──突然、辺りを圧倒するほどの力が巻き起こった。数値を表す機械を見ていた教師は思わず目を見開き、新入生の多くは吹き飛んでしまった。
残った数人の新入生は自らバリアを張り、その神無月の令嬢が解放した魔力を感じていた。
数秒後、力は収まり、治癒室に残ったのは魔力を測定する担当の教師と、バリアを張れる程の強い魔力を持った生徒──クラスで言えばAAより上の者のみが残っていた。
「……先生、私の数値は」
「あっ、神無月さんは……十万でございます。
もちろんクラスはSSとさせて頂きます」
新入生の中で大きなどよめきが巻き起こった。
──……やはり彼女は神無月家の令嬢なのだ、と辺りは改めて実感した。
瑠楓は軽く礼をし、ブレスレットを外した後、ゆっくりと水晶玉の前に足を運んだ。
「では、詠唱を唱えてから水晶玉に触れて下さい」
瑠楓はゆっくりと震える手で水晶玉に触れる。
──純白の光が辺りを包み込み、そして水晶玉は……
魔力を持つ人間のみが通える、国内最大規模の魔術学院である。
由緒ある学び舎の正面には庭園があり、真ん中にある聖水の噴水を囲むように『夢かなう』の花言葉を持つ青い薔薇が咲き乱れている。
その他、校舎の後ろにはクリスタルホールと呼ばれる集会所や、魔力回復などに使うポーションや、昼食を買うカフェテリアなどの施設がある。
生徒はここで三年間学業と魔術を学び、最後の一年ではそれぞれの夢に必要な魔術を集中的に学ぶ。
そんな魔術学院では、新しく八十人の新入生と、数人の教師を迎え入れる入学式を行っていた。
理事長や生徒会の言葉を終え、今度は新入生ひとりひとりの『属性』と『魔力』を測定する為に、理事長が詠唱を唱え空間移動を行った。
「えー、これから属性と魔力測定を行います。
この結果によってクラスを分けるので不正を行わないように。……まずは藍乃さん」
この学院では、他の学校よりも最先端の技術を使っていて、素早く、そして正確にそれぞれの属性と魔力の数値が分かるのだ。
魔力を測定する際は、金属製のブレスレットを装着し、その状態で自分の魔力を限界まで放つ事でブレスレットが魔力を感知し数値化する。
平均的な魔力を持った者だと五百で、教師に匹敵する魔力値は二千である。権力を持つ貴族や名家の血筋は五千を表す事もある。
その数値によってクラス分けがされ、上から順にSS、S、AA、A、B、Cの六種類に分けられる。
また、属性を判定する際は、詠唱を唱えてから神聖な水晶玉に手を触れる事でそれぞれの属性を表す色に変化する仕組みだ。
ほとんどの人は火、水、木、光、闇、そして時の六大属性からなる氷や花、雷や音などの属性に適正を持っている。
数分後、教師はその少女の名を呼んだ。
──神無月 瑠楓。王国の十二大名家のひとつ、神無月家の長女である。
その場にいた多くの新入生は、果たして神無月家の令嬢がどんな魔力数値、そしてどのような属性を持っているか、息を飲んで見守った。
「……魔力を放出、するんですね」
「ええ、そうですよ。限界まで」
白に近いクリーム色の髪に、黄金の光る瞳を持つその姿は一見神々しいが、彼女は怯えた顔で魔力を出そうとしない。
「……体調が優れませんか?」
「いいえ、そんなことは……」
新入生達の間で微かにざわめきが広がった。
瑠楓は震える手で金色に光るブレスレットを腕にはめ、魔力測定に集中する為に目を閉ざした。
──突然、辺りを圧倒するほどの力が巻き起こった。数値を表す機械を見ていた教師は思わず目を見開き、新入生の多くは吹き飛んでしまった。
残った数人の新入生は自らバリアを張り、その神無月の令嬢が解放した魔力を感じていた。
数秒後、力は収まり、治癒室に残ったのは魔力を測定する担当の教師と、バリアを張れる程の強い魔力を持った生徒──クラスで言えばAAより上の者のみが残っていた。
「……先生、私の数値は」
「あっ、神無月さんは……十万でございます。
もちろんクラスはSSとさせて頂きます」
新入生の中で大きなどよめきが巻き起こった。
──……やはり彼女は神無月家の令嬢なのだ、と辺りは改めて実感した。
瑠楓は軽く礼をし、ブレスレットを外した後、ゆっくりと水晶玉の前に足を運んだ。
「では、詠唱を唱えてから水晶玉に触れて下さい」
瑠楓はゆっくりと震える手で水晶玉に触れる。
──純白の光が辺りを包み込み、そして水晶玉は……