この広い世界で君と出会い、恋に落ちて。
*
風side
「お父さん、みてみて!」
「おお、風。すごいな」
お父さんは優しかった。
子供の俺には激甘で、俺のいうことならなんだって聞いてくれた。
でも、そのお父さんの姿は家での姿。
外の世界のお父さんは社長。
お父さんはずいぶん厳しかったらしい。
だから恨まれていることも多かった。
「社長!このままではこの会社はつぶれてしまいます!」
「社長!どうしてあいつを昇進させたんですか、あいつはだめです」
「社長!社長!」
お父さんの経営方針は他のひとからみると、危うかったらしい。
「もうだめだろ、あの社長」
影でそんなことを言われているのを聞いたのは、何十回、何百回にも及んだ。
まあまだ子供だった俺にはそんな意味なんて全然知らなくて、ただ自由に遊んでたんだけど。