この広い世界で君と出会い、恋に落ちて。



風side


「お父さん、みてみて!」

「おお、風。すごいな」


お父さんは優しかった。

子供の俺には激甘で、俺のいうことならなんだって聞いてくれた。


でも、そのお父さんの姿は家での姿。


外の世界のお父さんは社長。

お父さんはずいぶん厳しかったらしい。

だから恨まれていることも多かった。



「社長!このままではこの会社はつぶれてしまいます!」

「社長!どうしてあいつを昇進させたんですか、あいつはだめです」

「社長!社長!」


お父さんの経営方針は他のひとからみると、危うかったらしい。


「もうだめだろ、あの社長」


影でそんなことを言われているのを聞いたのは、何十回、何百回にも及んだ。

まあまだ子供だった俺にはそんな意味なんて全然知らなくて、ただ自由に遊んでたんだけど。

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