この広い世界で君と出会い、恋に落ちて。


「わたし再婚することにしたから」


そんな母さんからの連絡がきたのは中学2年の夏だった。


相手は、また社長。

母さんは金にしか興味がないんだとわかった。

だから簡単に父さんを捨てた。


「風もきなさい。あんな人なんてほっとけばいいのよ」


そう言われたけど、俺はいかなかった。

いまここで俺が父さんを見捨てたらどうなる?


「風、すごいな」

そういって笑ってくれた父さんを思い出す。

思い出せば、苦しくなる。

もうあの頃の父さんはどこにもいないんだって。

< 54 / 86 >

この作品をシェア

pagetop