この広い世界で君と出会い、恋に落ちて。
「わたし再婚することにしたから」
そんな母さんからの連絡がきたのは中学2年の夏だった。
相手は、また社長。
母さんは金にしか興味がないんだとわかった。
だから簡単に父さんを捨てた。
「風もきなさい。あんな人なんてほっとけばいいのよ」
そう言われたけど、俺はいかなかった。
いまここで俺が父さんを見捨てたらどうなる?
「風、すごいな」
そういって笑ってくれた父さんを思い出す。
思い出せば、苦しくなる。
もうあの頃の父さんはどこにもいないんだって。