この広い世界で君と出会い、恋に落ちて。
酒とたばこのせいで肺がやられた父さんは、みるみる痩せていき、そのあとあっけなく死んだ。
中学3年の春だった。
涙もでなかった。
ただ亡骸をみて思ったのは
「かわいそう」
それだけ。
社長だったころは人望もあり、あれだけまわりに人がたくさんいたのに、最期は息子である俺一人にしか看取ってもらえないなんて。
そのあと、身寄りのない俺は結局母さんのところへとやってきた。
昔と変わらず、無駄にでかい家へと。
でもどうしてもこの家に染まりたくなくて、坊ちゃんと呼ばれるのが嫌で、俺は髪を金に染め、ピアスもあけた。
その姿をみたときの母さんの顔は傑作だった。