寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「連絡を取るのは控えましょう」
アラームの音で目が覚めた雪乃は、広いベッドの真ん中にひとりで横になっていると気が付いた。
乱れた髪を整えながら体を起こし、半分開けられているカーテンの朝日に目を細める。
戸の向こうには人の気配があり、それが先に起床した晴久だと分かるとすぐにベッドを降りて戸を開けた。
晴久はソファに腰掛け、かすかな音量でテレビのニュースを流している。彼は戸の開く音にすぐに振り向き、微笑んだ。
「おはようございます、細川さん」
立ったままの雪乃は、やはり昨晩の出来事は夢ではなかったと自覚し、早朝でも爽やかな彼にさっそく体温が上がる。
「おはようございます。すみません、先に起きてらしたんですね」
「この時間のニュースを見るのが日課なもので。ゆっくり眠れましたか?」
「はい」
「買ってきたものですが、よければ食べて下さい」
テーブルに置かれた袋の中にはビニール包装のされたサンドイッチとペットボトルの緑茶が入っており、彼はそれを手繰り寄せた。晴久が早朝に買ってきたものだ。
申し訳なさから雪乃は胸のあたりをキュッと握りしめる。
「すみません、なにからなにまでしていただいちゃって……」
「いいんですよ。自分のを買ったついでです」