首筋に、甘噛み。
ああやって本能のままに鳴けたら、このくすぶっている身体もどうにか落ち着くんだろうか。
水槽の水をぜんぶ自分にかけたい。
熱くて、痛くて、たまらない。
「……めちゃくちゃにされたくないなら出ていけ!!」
荒らげた声とともに、三角フラスコが床に落ちた。
ガシャンッと散らばっていくガラスの破片。水槽のシルエットが床に反射していて、赤紫色の明かりの中で、ガラスがキラキラと輝いていた。
「やっぱり先輩の瞳は綺麗ですね」
苛立つ俺の身体に溶けていくような、柔らかい声。
正常でいたいのに、抗うことができない。
まるで獲物を狙うように変色している自分の瞳。爪は伸び、凶器のように鋭い牙が見えても、女は緋色に光る俺の目を逸らさなかった。