首筋に、甘噛み。


「私は先輩の秘密を知っているので大丈夫ですよ」

ふたつ下の後輩、吉光(よしみつ)みずほに身体のことがバレたのは1カ月前のこと。

高校入学と同時に生物部に入ってきたこいつは、ことあるこどに俺にひっついてきた。

どうやら見た目がタイプだったようで『好きです』『彼女にしてください』と、恥ずかしげもなく自分の気持ちを押し付けてきた。

最初は、うまくあしらっていた。

うざい、消えろ、あっちに行け。

嫌悪感をむき出しにしながらも、心はとくに乱れることはなかった。

……なかったはずなのに、どうしてこんなにも(うず)きがおさまらないのか、自分でもムカついてくる。 


「先輩はヴァンパイアですよね?私、少し調べたんです。ヴァンパイアには〝好血期(こうけつき)〟というものがあって、文字どおり血がほしくてたまらない時期が定期的に来るって」

「だったら俺が今、どんな状況になってるかわかるだろ」

「誰かの血を吸うことで落ち着くのなら、私の血を吸ってください!」

頭が、グラッと揺れた。

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