白球と最後の夏~クローバーの約束~
「まあいいや。マネージャーは水汲み。1年の高橋君は、悪いけどタイム測って」
え? タイムを測るのはわたしの仕事なのに・・・・。
すると、稜ちゃんはてきぱきとみんなに指示を出していく。
今日は顧問兼監督の先生は出張でいないため、稜ちゃんのリーダーシップが発揮される日だ。
でも・・・・わたしの仕事、取らないでよ、稜ちゃん。
「マネージャー、返事は?」
なかなか返事をしないわたしに稜ちゃんは少し厳しい口調。
高橋君は、とっくに「はいっ!」と言っていた。
「・・・・はい」
稜ちゃんに怒られたような気持ちになったわたしは、肩を落として力なく返事をした。
「マネージャー、ジャージも濡れてるみたいだから風邪ひかないようにしろよ」
タイムを測りにグラウンドの真ん中まで行くとき、稜ちゃんは最後にそう言った。
「はいっ!」
稜ちゃんのこんな一言で、わたしは急に笑顔に変わる。
やっぱり稜ちゃん、かっこいい。
こういうさり気ないところに、わたしの胸はまた、ぎゅぅーっと締めつけられた。