白球と最後の夏~クローバーの約束~
「嘘つきだよな、マネージャーって。あのとき、岡田が見てたくせに」
「あ・・・・ごめ───」
「せっかく今日勝てたのに、全然おもしろくねーし」
わたしの“ごめん”にかぶせるように、稜ちゃんは空を見上げながらつぶやいた。
「・・・・」
それとは逆に、わたしは軽率な言葉を言ったことにシュンとなる。
下を向くと、今にも涙がコンクリートを濡らしそうだ。
そのとき道路をバイクで通りかかったおじさんが、わたしたちを追い越すときに不思議そうに見ていた気がした。
「今年で最後なんだぞ? マネージャーがちゃんと見てなくてどうすんだよ」
フゥ・・・・と肩で1回大きく息をすると、稜ちゃんはそう言った。
ため息をつくことで気分が落ち着いたのか、声のトーンが普通になってきた。
「・・・・うん」
こぼれ落ちるギリギリまで溜まった涙をさっとふいて、わたしは稜ちゃんの後ろ姿を見上げた。
わたしの返事を聞くと、稜ちゃんはまた無言で自転車を押しはじめた。
それに合わせて、わたしもまた歩きはじめた。