白球と最後の夏~クローバーの約束~
それからまた5分くらい。
何もしゃべらないまま、家ばかりがどんどん近くなっていく。
すると今度は、歩きながら稜ちゃんが口を開いた。
「岡田・・・・手、早いらしいから」
「へっ?」
ちゃんと聞こえてたんだ。
ちゃんと聞こえていたんだけど、鈍いわたしはピンとこない。
「・・・・いや、なんでもない」
「??・・・・うん」
するとそこに、試合中の岡田君の言葉が浮かんでくる。
“やきもち”
稜ちゃん、やきもち妬いてるの?
・・・・まさか。そんなことないよ。
視線を上げたときに見えた稜ちゃんの耳の後ろ、少しだけ赤く見えたのは・・・・。
───きっと、わたしの見間違いだよね・・・・。