白球と最後の夏~クローバーの約束~
「今日は何枚探せるかなぁ・・・・」
ふっと本来の目的を思い出す。
ひんやりとほっぺに触れるそよ風がすごく心地よくて、一気に眠気と妄想が晴れていった。
朝に弱いココちゃんってば、なんでこんなに気持ちいいのに早起きしないかな?
モーニングコールをかけて教えたくなるくらい、本当に気持ちのいい朝だった。
それからわたしは、さっそく着替えて6時前には家を出た。
向かった先はいつものあの場所。
7年前、稜ちゃんと2人でクローバーを探した、あの場所。
あれから恋が始まって、今では気球みたいに大きくなった“好き”の気持ち。
あれからよくクローバーを探すようになって、見つけるたびに稜ちゃんにあげてたっけな。
今じゃ“新人戦”とか“甲子園”とか、渡す理由がないとあげられなくなっちゃったけど。
「ワンッ!ワンッ!」
物思いにふけりながら歩いていると、後ろから犬の鳴き声がした。
振り返ると、ちぎれんばかりにしっぽを振ったミニ柴の“あんこちゃん”と、飼い主の藤原のおばちゃんだった。