白球と最後の夏~クローバーの約束~
「おはようございます、藤原のおばちゃん!あんこちゃんも、おはよ〜」
「ワンッ!クゥ〜ン」
あんこちゃんの頭を撫でてあげると、かわいらしい甘えた声で応えてくれた。
かわいいなぁ・・・・。
「百合ちゃん、今日も早いねぇ。いいお天気で何よりだわ。うちの娘も早起きしてくれないかしらねぇ」
「いえいえ、早起きが好きなだけですよ、わたしは」
「そんなことないわよ〜!娘が飼いたいって言うからこの子が家に来たのに、24歳にもなってグーグー寝て・・・・。お恥ずかしいわよ」
「そんなことないですよ。毎日遅くまでお仕事してるんですもん。ご苦労さまです」
「あら、ありがとねぇ」
「いいえ〜」
なんていう、朝の世間話をする。
あったかい雰囲気の藤原のおばちゃんがわたしは大好き。
もちろん、よく懐いてくれるあんこちゃんも大好き。
それからしばらく立ち話をして、おばちゃんとあんこちゃんとは別れた。
“またね!”と手を振りながら別々に歩みを進めると、そのまま誰にも会わずにあの場所に着いた。