白球と最後の夏~クローバーの約束~
・・・・だから、こんなところくらいしか置く場所がないのに。
というか、置けない。
誰が使ってもいいけど、奥のほうに戻すのはやめてほしいな。
届かない人がいること、完全に忘れられてるよ。
ヘコむなぁ・・・・。
「あっ、そうだ。水道で砂は落としてきた?」
自分の存在感の薄さにヘコみ気味でも、気を取り直して明るい口調で聞いてみる。
こんなことでヘコんでたら稜ちゃんに笑われちゃうもんね。
「ぶっ・・・・!おもしれぇ・・・・」
だけど、質問された本人の稜ちゃんは勢いよく吹きだした。
おまけに爆笑。
・・・・えぇぇぇっ!なな、なんで?
どこにも笑う箇所なんてないじゃん!おもしろくないじゃん!!
1人でむくれるわたし。
「届かないなら届かないって始めから言えばいいだろ? ウサギじゃねぇんだから」
すると稜ちゃんはそう言いながら私の背後に来て、ひょいと薬箱に手を伸ばした。
ドキッ・・・・。
あと数センチで、稜ちゃんの胸がわたしの髪に触れそう・・・・。