白球と最後の夏~クローバーの約束~
狭い場所で棚と、しかも稜ちゃんに挟まれたわたし。・・・・やばい、失神寸前。
稜ちゃんの腕が上がった瞬間の、ふわっと流れる空気の振動。
それだけでドキドキが最高潮で、意識が飛びそう。
ユニホームから香ってくる、洗濯したばかりのしゃぼんの匂い。
たまらなく幸せな匂い・・・・ずっと嗅いでいたいなぁ。
ゴチン!
「ほら、薬箱」
そんな妄想の世界にトリップしていると、急に頭のてっぺんに重たいものが乗っかった。
稜ちゃんがちょっとふざけて薬箱をわたしの頭に乗っけたんだ。
「あ、うん・・・・ありがと」
「砂は落としてきたから」
あぁ、さっきの質問、聞いてたのね・・・・。
「うん、分かった」
稜ちゃんは、何食わぬ顔でさっき座っていた椅子に戻っていく。
わたしはそんな顔できっこない。・・・・さっきは頑張って作ったけど今は無理。
心臓は弾け飛びそうで、顔はゆでダコになって。
お礼を言うのも返事をするのも、どれだけ大変だったことか。
体が固まったまま動けないよ。