白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
狭い場所で棚と、しかも稜ちゃんに挟まれたわたし。・・・・やばい、失神寸前。

稜ちゃんの腕が上がった瞬間の、ふわっと流れる空気の振動。

それだけでドキドキが最高潮で、意識が飛びそう。

ユニホームから香ってくる、洗濯したばかりのしゃぼんの匂い。

たまらなく幸せな匂い・・・・ずっと嗅いでいたいなぁ。


ゴチン!


「ほら、薬箱」


そんな妄想の世界にトリップしていると、急に頭のてっぺんに重たいものが乗っかった。

稜ちゃんがちょっとふざけて薬箱をわたしの頭に乗っけたんだ。


「あ、うん・・・・ありがと」

「砂は落としてきたから」


あぁ、さっきの質問、聞いてたのね・・・・。


「うん、分かった」


稜ちゃんは、何食わぬ顔でさっき座っていた椅子に戻っていく。

わたしはそんな顔できっこない。・・・・さっきは頑張って作ったけど今は無理。

心臓は弾け飛びそうで、顔はゆでダコになって。

お礼を言うのも返事をするのも、どれだけ大変だったことか。

体が固まったまま動けないよ。
 

< 162 / 474 >

この作品をシェア

pagetop