白球と最後の夏~クローバーの約束~
誰もいないトイレで1人、わたしは手洗い場の蛇口を思いっきりひねって水を出した。
ジャージャー・・・・
ジャージャー・・・・
すごい音で水が流れる。
蛇口から出たばかりのきれいな水は、出口を知っているかのように排水溝に向かってぐるぐると吸い込まれていく。
わたしは、そんな様子をただ放心状態でぼーっと見つめていた。
「なんで・・・・?」
すると、思わずふさいだ口・・・・その指の隙間から、さっきの暴言への疑問がかすかにもれた。
岡田君を見たらなんだか妙にイライラして、思ってもいないことが口から飛び出していったんだ。
なんで? なんで? なんで?
それでも、なんとか冷静になろうと思って、何度も深呼吸を繰り返してみる。
しばらくすると、徐々に心に落ち着きが戻ってきて、考える力もようやく戻った。
・・・・きっと、怖かったんだ。
もし、あの場面を誰かに見られでもしたら・・・・。
それがもし、稜ちゃんやココちゃんだったら・・・・。
それが怖かったんだ、わたし。