白球と最後の夏~クローバーの約束~
その調子を崩さないまま、岡田君は話を続ける。
「稜が下駄箱で待ってるって」
「え・・・・」
今なんて? 待ってる? 誰を?
「稜のこと、あんまり待たせんじゃねぇぞ? 部活中も何気に心配してたみたいだしな。顔見せてやれよ」
「なん・・・・で?」
なんで稜ちゃんがわざわざわたしを待つの? 分からない。
「“なんで?”って、雨だからなんじゃねぇの? 俺にもよく分かんねぇけど」
わたしの途切れ途切れの質問に、今度は岡田君、少し苦笑いで答えた。
「ほら、早く一緒に帰ってやれって。あいつ、待ちくたびれて風邪ひくぞ?」
そう、ちょっと脅す岡田君。
でもわたし・・・・謝らなきゃ。
意を決して口を開く。
「ごめんっ、あの───」
「分かってるって。稜に見られたら勘違いされるんじゃねぇかと思ったんだろ? 気にしてねぇよ」
でも、謝りかけたわたしの言葉は岡田君に遮られた。
言いたかったこと、先に言われちゃった。本当にその通りで、情けなくなってくる・・・・。