白球と最後の夏~クローバーの約束~
そしてすぐに岡田君は、わたしが机に広げっぱなしだった針や糸、フェルトを片付けはじめた。
「お、今年のお守りはこれか!」とか「作るの早いじゃん、てるてる坊主!」とか、そんなことを言いながら。
でもわたしは・・・・。
「ごめんね。わたしのこと、腹黒いって思ったよね・・・・」
手が動かなくて、ジャージの太ももの辺りをギュッと握ったまま、そう声を絞りだした。
岡田君が“気にしてない”って言っても、やっぱりちゃんと謝りたい・・・・。
「ばぁか!アホなこと言ってねぇで早く着替えてこいよ。ここ、俺が片付けとくから」
「・・・・でも」
岡田君は笑ってそう言うけど、わたしはまだ自分が許せない。
「でもじゃねぇって。いいから早く行ってこいって!」
シッ!シッ!とわたしを手で追い払う仕草をする岡田君。
こんなふうにされたら、もう着替えるしかないじゃん・・・・。
もう1回だけ「ごめんね」と言って、わたしは制服を持ってトイレに行った。
あの黒いものが何だったのか、それは結局、聞けなかった。