白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
わざわざお父さんが迎えに来てくれた嬉しさ、それと、稜ちゃんとあの空気の中を30分も歩かなくてよくなった安堵感。

またまた現金なやつの一面が出てしまったわたしだけど、今日はお父さんに感謝しなくちゃ。


帰ったら晩酌につきあって、ビールでも注いであげようかな。

なんて、そんなことを考えた。





「ところで稜君、自転車は?」


車を走らせてすぐの赤信号に引っかかったお父さんは、少し窓を開けてタバコに火をつけながら聞いた。


「あ、学校に。カッパ持ってないんで、今日は置いてきました」


稜ちゃん、カッパなんて着るんだぁ。しかも“僕”って言ったし。

かわいいなぁ・・・・。


さっきまでの気まずさも忘れて、わたしは新しい稜ちゃん情報を頭にインプット。

また増えた。やった!


「なんだ。じゃあ、今から取りに戻ろうか? 明日の朝、学校まで大変だろう?」


ふぅー・・・・と白い煙を吐いて、ミラーで稜ちゃんを見ながらお父さんが聞く。

狭い車内は、一気にタバコの煙と匂いが充満していく。
 

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