白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
「いえ、とんでもないですよ。乗せてもらってるだけで十分です。気にしないでください」

「そうか?」

「はい!」

「じゃあ、明日もこの雨の調子だったら百合子と一緒に朝も乗っけてってやろうか? な〜んてな」


バシッ!


「ちょっとお父さんっ!」


ガバガバとカバみたいに大口を開けて豪快に笑うお父さんに、わたしの手と口は同時に出た。

お父さんの左腕、力を込めて思いっきり叩いてやった。


「お〜!そんなんじゃ痛くもかゆくもないもんね〜!」

「あんまり調子に乗らないで!」


もう43歳のお父さんは、いい歳こいて妙に子どもっぽいところがあって。

お母さんに言わせれば、そこが魅力らしいんだけど。

今はちょっと・・・・。


稜ちゃんの前なだけあって、こんなお父さんで恥ずかしくて怒っちゃったんだ。

お父さんには、いつも“デーン”と構えていてもらいたいのに。

バカっ!


「はいはい。百合子は母さんに似て怒ると怖いもんな〜。おっと、青だ」


お父さんめ、まだ調子に乗るか!!
 

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