白球と最後の夏~クローバーの約束~
だって・・・・。
途中でわたしのお腹がグゥ〜って鳴ったら爆笑の大嵐で。
稜ちゃんと2人で帰っていたら、雨音で聞こえなかったかもしれないのに。
でも、よりにもよって、なんで稜ちゃんの前でお腹が鳴るかな。
お腹のバカっ!
ついでにお父さんのバカ!
爆笑した稜ちゃんも・・・・バカ。
「おしっ、着いたぞ」
10分後、わたし以外は笑いが絶えないまま家に着いた。
たかが10分、されど10分。
わたしにとっては、地獄のような10分間だった。
「今日は送っていただいてありがとうございました!」
稜ちゃんが車を降りながらお父さんにお礼を言う。
「なんの!濡れた制服、ちゃんと乾かしとけよ!」
「はい!じゃあ、失礼します」
「おやすみ、稜君」
「おやすみなさい」
稜ちゃんを降ろしたあと、カローラも小さなガレージに停まった。
停まるなりお父さんに「バカ!」って言って、わたしはバタバタと家に入った。
稜ちゃんには、バイバイすらまともに言えなかった。