白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
「結局はかどらなかったしなぁ」


なんて言いながら、岡田君に片付けてもらった手提げカバンの中身を机に広げた。

すると・・・・作ったてるてる坊主がピョコンと顔を出した。


しまった!

稜ちゃんに渡すの忘れてた・・・・。


「どうしよう・・・・」


てるてる坊主を持ったまま、今から届けに行こうか、明日にしようかと迷う。


「今から行ったら迷惑かなぁ」


四つ葉のクローバーの目覚まし時計は9時5分。

明日でもいいけど、せっかく作ったんだから今すぐ見せたい・・・・。

そう思うのが人の心。


稜ちゃんのリクエストなんだし、練習試合までに雨が上がらなかったら嫌だし。

・・・・というのは言い訳で、本音は稜ちゃんに“おやすみ”って言う口実がほしいだけなんだけどな。


“う〜ん”なんて唸りながら、チラッと窓に目を向けてみる。

もしかしたら・・・・。

100パーセントありえないだろうけど、稜ちゃんが顔を出すことがあるかもしれない。

そう思って、一か八か、カーテンを開けてみた。
 

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