白球と最後の夏~クローバーの約束~
“ずっと聞いていたい”という気分になるところを、寸前でグッとこらえる。
それから、間違って電源ボタンを押さないように、慎重に慎重に通話ボタンを押す。
ピッ!
「も、もしもし・・・・?」
緊張で声が裏返りそうになるのを必死で誤魔化しつつ、とりあえずは“もしもし”から。
『おぅ。どうした?』
電波に乗って耳まで届く稜ちゃんの声は、近くで聞くのとはまた違う感動がある。
「あ、あの、てるてる坊主作ったんだけど、渡すの忘れてたから」
窓辺に戻って、電話越しに稜ちゃんに言う。
目で見ているのに電話で会話するなんて、なんだかすごく不思議な感覚。
稜ちゃんと電話しちゃってるよ、わたし・・・・。
『あぁ!そういえばもらってなかったな!』
「うん。お父さんのせいで渡しそびれちゃったよ」
そう言って、わたしは“たまったもんじゃないよ・・・・”と肩をすぼませた。
『あぁ〜!あれは笑ったなぁ〜』
対する稜ちゃんは、そう言いながら肩をクックッと震わせて笑いはじめた。