白球と最後の夏~クローバーの約束~
『そこから投げてくれよ、今欲しいんだけど』
すると、笑いが治まったらしい稜ちゃんからそんな言葉が届く。
「えっ? ここから投げるの?」
『そう!早く吊してやんないとご利益ねぇだろ?』
え!? ご利益の問題?
なんか違うような気がするよ、稜ちゃん・・・・。
「さすがにそれは・・・・。ちゃんと真っすぐ飛ばなかったら泥だらけになっちゃわない? それに、かわいそうだよ、てるてる坊主。せっかく作ったのに・・・・」
無謀なチャレンジだと思ったわたしは真面目に答えた。
『ははっ・・・・冗談!大事なてるてる坊主、誰が投げさせんだよ。明日渡してくれればいいから。それにお前、コントロールも悪そうだしな』
してやったり顔で、向こうの窓辺の稜ちゃんがゲラゲラ笑う。
“お前”って初めて言ってくれたのはすごく嬉しいよ?
だけど・・・・“なんだ、冗談か”って素直に受け入れられないのは、きっとこの言葉のせい。
“コントロールが悪い”ってのは言い過ぎだよ、稜ちゃん。
でも、確かにそうなんだけどさ。