白球と最後の夏~クローバーの約束~
『・・・・懐かしいな、それ』
「ごめんっ、あの・・・・」
必死になりすぎて、自分で自分をセーブできなかった。
その結果、思わず出てしまったのは、いつも心の中だけで呼んでいる“稜ちゃん”だった。
『なに?』
稜ちゃんは穏やかに聞き返す。
「おっ、お・・・・おやすみっ!」
ガラガラッ!バンッ!
どうしたらいいか分からなくなってしまって、わたしは乱暴に“おやすみ”を言って、乱暴に窓もカーテンも閉めた。
『おやすみ』
まだ通話中だった携帯から聞こえてきたのは、ちょっと困りながらの稜ちゃんの“おやすみ”・・・・。
照れくさそうで、それでいて、すごく温かい口調だった。
それからすぐに、わたしはぽふっとベッドに仰向けになった。
「どうしちゃったんだろ・・・・」
まさに茫然自失。
ツーツーと言う携帯を見つめていると、次から次へと気が抜けていく。
頭がぼんやりして、明日から稜ちゃんとどう接したらいいか・・・・。
全然分からない。