白球と最後の夏~クローバーの約束~
それでも、なんとか部室の前まで来ることができたわたし。
ドアをノックする前に、気持ちを落ち着かせようと何度か深呼吸を繰り返す。
昨日“稜ちゃん”とつい言ってしまったから、今日も勢いで言ってしまいそうで・・・・。
なるべく普通に接するために、わたしは深呼吸をしながら精神統一をした。
それから・・・・やっぱり岡田君。
岡田君に対しても、普通に接しないとどこかギクシャクしてしまうと思って。
わたしなりに、心の準備をしておきたかったんだ。
そして、コンコンッ!とドアをノックしようとしたとき───・・
中から大きな声がして、わたしの手は一時停止した。
「いつまでほっとく気だよ!?」
え、岡田君・・・・?
誰かに怒鳴っている。
「・・・・なんのことだよ」
かすかに聞こえた声は・・・・ダメ、分からない。
ドア一枚隔てていると、小さすぎて誰の声なのかはっきりしない。
でも、岡田君の感情的な声とは対照的で、不機嫌ではあるけれど、怒鳴るほどの感じではなかった。