白球と最後の夏~クローバーの約束~
岡田君は一体誰と話しているの?
岡田君が怒鳴る声なんて、わたし初めて聞いた・・・・。
「あいつはな、何年も何年もお前しか見てねぇんだよ!」
岡田君の怒声。
その人にも自分自身にも苛立っているような・・・・そんな怒声。
あいつって?
何年もって?
お前って誰のこと?
わたしは、ドアの前に根が生えたように、少しも動けなくなった。
こんな立ち聞きみたいな真似、するつもりじゃないのに・・・・。
「・・・・知ってる」
誰かの声。
少し間を置いて答えて、困ったような様子だった。
「知ってんならなんで何もしてやらねぇんだよ!」
「でもな───」
「あいつ、昨日・・・・1人で泣いてたんだぜ」
岡田君の声は、今度は声のトーンを落として静かな口調だった。
でも、節々に威圧感は残る。
もしかして───・・
岡田君が言う“あいつ”って、わたしのこと?
じゃあ、怒鳴られている人は・・・・まさか稜ちゃん?
でも、どうして・・・・。