白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
岡田君は一体誰と話しているの?

岡田君が怒鳴る声なんて、わたし初めて聞いた・・・・。


「あいつはな、何年も何年もお前しか見てねぇんだよ!」


岡田君の怒声。

その人にも自分自身にも苛立っているような・・・・そんな怒声。


あいつって?

何年もって?

お前って誰のこと?


わたしは、ドアの前に根が生えたように、少しも動けなくなった。

こんな立ち聞きみたいな真似、するつもりじゃないのに・・・・。


「・・・・知ってる」


誰かの声。

少し間を置いて答えて、困ったような様子だった。


「知ってんならなんで何もしてやらねぇんだよ!」

「でもな───」

「あいつ、昨日・・・・1人で泣いてたんだぜ」


岡田君の声は、今度は声のトーンを落として静かな口調だった。

でも、節々に威圧感は残る。



もしかして───・・


岡田君が言う“あいつ”って、わたしのこと?

じゃあ、怒鳴られている人は・・・・まさか稜ちゃん?

でも、どうして・・・・。
 

< 209 / 474 >

この作品をシェア

pagetop