白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
「泣いてた・・・・?」


たぶん、稜ちゃんの声。


「そうだよ、自分が嫌な女なんじゃないかと思って一人で泣いてたんだよ。お前にふさわしくないんじゃないか、って」

「はぁ・・・・」


稜ちゃんらしき人は、答えない代わりに大きなため息をついた。

わたしには、それが何の意味を持つため息なのか分からなかった。

単に面倒くさいのか、それともほかの感情があるのか・・・・。


「どうしてあいつを安心させてやらねぇんだよ、お前。あれだけ想ってくれるやつ、ほかにいるか? なぁ、いねぇだろ・・・・?」

「・・・・」


稜ちゃんらしき人は無言だった。

岡田君の声だけが、部室の外まで・・・・わたしの耳まで響いてくる。


「お前がいつまでもそんなんだったらな───・・」


岡田君はそこで言葉を区切った。

なんだか、今からとんでもないことを言いそうな・・・・そんな予感が胸をざわつかせる。


でもわたしは、もうこれ以上聞いていちゃいけないのに、聞くべきじゃないのに、足が竦んで動けなくて・・・・。
 

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