白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
一瞬、何が起きたのか、何を聞いたのか分からなくて。

でも、次の瞬間には頭が真っ白になって・・・・。

いつの間にか、差していた傘も持っていてたてるてる坊主もほっぽり出して、わたしは雨の中を走っていた。


アスファルトの凹みに溜まった泥水が、わたしの紺色の靴下にバシャバシャと跳ね返る。

制服だったから、ローファーの中も水浸しになった。

夏服に変わったばかりのセーラー服も、雨に濡れてしおれていく。


わたしの目からは、走っているうちに涙が流れてきて・・・・。

でもそれが、何の涙がなのか自分でもよく分からなかった。

ただ、石を飲み込んだみたいに、体も心もズシンと重かった。










ガラガラッ!


「はぁはぁ・・・・ココちゃん・・・・」


逃げるように部室の前から走り去ったわたしは、無意識に音楽室に足が向いていた。

なぜかは分からないけど、どうしてもココちゃんに会いたくてたまらなかった。

一瞬にして楽器の音は鳴り止み、吹奏楽部の部員たちの目が一斉にわたしに注がれた。
 

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