白球と最後の夏~クローバーの約束~
無理もないよね。
大きな声だったし、全身ずぶ濡れだし、それに、泣いているんだから・・・・。
「どうしたの!?」
わたしの泣き顔を見て目を丸くしたココちゃんが、勢いよく立ち上がった。
そして、すぐに近くのタオルを引っつかんで、わたしの前に駆け寄ってくれた。
「ココちゃん・・・・ごめっ・・・・」
「ううん。いいよ、百合。どうしたの? こんなに濡れたらまた風邪ひいちゃうよ?」
走ってきたのと泣いているせいで“ヒクッヒクッ”と変な呼吸になっているわたしに、ココちゃんは温かい言葉とふかふかのタオルをくれた。
「っ・・・・うぅっ・・・・」
それが嬉しいやら申し訳ないやらで、わたしはココちゃんの顔を見ながらボロボロ泣いた。
「百合、今部活抜けてくるからちょっと待ってて。教室まで1人で戻れる?」
「うん・・・・ヒクッ・・・・」
ココちゃんは、泣いているわたしの背中をポンと押して、また音楽室に戻っていった。
わたしは、何度も何度も音楽室を振り返りながら、とぼとぼと教室まで歩いた。