白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
無理もないよね。

大きな声だったし、全身ずぶ濡れだし、それに、泣いているんだから・・・・。


「どうしたの!?」


わたしの泣き顔を見て目を丸くしたココちゃんが、勢いよく立ち上がった。

そして、すぐに近くのタオルを引っつかんで、わたしの前に駆け寄ってくれた。


「ココちゃん・・・・ごめっ・・・・」

「ううん。いいよ、百合。どうしたの? こんなに濡れたらまた風邪ひいちゃうよ?」


走ってきたのと泣いているせいで“ヒクッヒクッ”と変な呼吸になっているわたしに、ココちゃんは温かい言葉とふかふかのタオルをくれた。


「っ・・・・うぅっ・・・・」


それが嬉しいやら申し訳ないやらで、わたしはココちゃんの顔を見ながらボロボロ泣いた。


「百合、今部活抜けてくるからちょっと待ってて。教室まで1人で戻れる?」

「うん・・・・ヒクッ・・・・」


ココちゃんは、泣いているわたしの背中をポンと押して、また音楽室に戻っていった。

わたしは、何度も何度も音楽室を振り返りながら、とぼとぼと教室まで歩いた。
 

< 213 / 474 >

この作品をシェア

pagetop