白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
「わたしは・・・・」

「うん、あたしに遠慮しないで言ってみて?」


ココちゃんは窓からわたしに目を移して、長いまつ毛を何度かパチパチさせた。

わたしは、まだ生乾きのスカートの裾をキュッと握った。

そして、一つ大きく息をつくと、意を決してココちゃんの目を見つめた。


「わたしは、岡田君の言ったことがもしも本当でも、その気持ちには応えられないよ。やっぱり、不安でも稜ちゃんを好きでいたい」


これが、わたしの本当の気持ち。


岡田君のことは好き。

でもそれは、稜ちゃんを想う“好き”とは違う。

野球部の仲間としての“好き”であって、男の子としては、稜ちゃん以外は・・・・。


「よしよし、百合は偉いね。あたしが岡田のことを好きかもしれないと思って、ずっと言わなかったんだよね?」

「うん・・・・実はそうなんだ」


ココちゃんは、わたしの頭を優しく撫でてくれた。

その手が温かくて、気持ちを安心させてくれて、わたしはまた涙が出そうになった。


「この際だから言っとくけどね」

「ん?」
 

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