白球と最後の夏~クローバーの約束~
最終的に稜ちゃんが選んだネクタイは、わたしのウルトラマン。
・・・・ではもちろんなくて、店員さんが熱心に勧めたもの。
「この星座のようにキラキラする刺繍がお勧めでして、ネクタイピンは流れ星をあしらったデザインになっているんですよ?」
と店員さん。
「そうなんですか。いいですね。なぁ、これがいいと思うけど、どう?」
と、取って付けたようにわたしに同意を求める稜ちゃん。
「うん。それがいいと思うよ」
勝手に店員さんと張り合って、勝手に空回りして。それで、勝手に落ち込んでいるわたし。
笑顔で「それいいね!」って言えたらどんなにいいか。
稜ちゃんだって、少し不思議そうな顔だった。
でもね、稜ちゃんが好きだから。
好きだから、わたしが選んであげたかったんだ。店員さんなんて来てほしくなかったんだよ・・・・。
「買ってくるな」
店員さんにレジまで案内してもらう稜ちゃんがまるで他人のように見えた。
わたしは、ウルトラマンのネクタイを見つめながら涙を必死にこらえたんだ。