白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
「うん・・・・」


稜ちゃんに促されるまま、わたしは涙をふいて立ち上がり、部屋の窓を開けた。

そこには、こっちを見て笑う稜ちゃんの姿。その姿に、わたしの目にはまた涙が浮かぶ。


『今日のおわびな!』


そう言う稜ちゃん。

その声が電話口から聞こえたかと思うと、次の瞬間、ひゅるひゅると“何か”がわたしの目の前に降ってきた。

なにがなんだか分からないまま、わたしはそれをキャッチ。


『これ見て元気出せよな・・・・』


何が起きたの? と手の中の“何か”と稜ちゃんを交互に見るわたしに、そんな声がボソボソと聞こえてくる。


「あ、あの・・・・」

『その券、無期限有効だからな。いつでもどうぞ!』

「・・・・えっ?」

『じゃあな!おやすみっ!』


ブツン。

ツー、ツー、ツー・・・・。


これはなに?

“無期限有効”って?

なに? なに? なに?


頭の上にたくさん“?”を浮かべるわたしに構うことなく、稜ちゃんはブチッと電話を切って、窓もカーテンも一気に閉めた。
 

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