白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
ベンチに座るわたしの横で、同じくベンチに座って黙々とバットを磨いている岡田君に───・・。



「岡田君、あ、あのね。わたしが部室の前で立ち聞きしてた日のことなんだけど・・・・」

「・・・・」


そう話を切り出すと、岡田君は何も言わずにわたしの方を向いた。

バットを磨く手が徐々にゆっくりになっていって、最後は自然と止まった。


すぅー・・・・。

肺の奥、細胞の一つ一つにまで空気が入るように、わたしは息を吸い込んだ。

はぁー・・・・。

そして、緊張と罪悪感で異様に早くなる心臓をなだめるように、ゆっくりと息を吐いた。


それから───・・


「なんか・・・・言ってた?」


そう、ものすごい量の勇気をふり絞ってわたしは聞いた。

なだめたはずなのに、もう心臓が飛び跳ねている。


「“なんか”って?」


岡田君は、わたしとは逆でのんびりとした声で聞き返す。

それがかえって緊張を煽るんだ。


「キャプテン・・・・わたしのこと、なんか言ってた?」


声も震える。
 

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