白球と最後の夏~クローバーの約束~
「俺も投げてぇな・・・・」
わたしたちの前を稜ちゃんたちが通るとき、拍手をしながら岡田君がぽつりとつぶやいた。
「・・・・ポジションならピッチャー以外もあるのに、どうしてピッチャーにこだわるの?」
前から気になっていたんだ、岡田君の肘のこと。
だからわたしは、今なら話してくれるんじゃないかと思って聞いてみることにした。
「肘のこと?」
岡田君は、胸を張って行進していく稜ちゃんたちを目で追いながら聞き返した。
「うん」
わたしも、そんな稜ちゃんたちを目で追いながら、そう相づちを打った。
「・・・・肘はもう治ってる。ピッチャー以外なら選手としてもやっていけるって、医者には言われた」
「・・・・」
切なそうに言葉を紡ぐ岡田君。
どんな顔で、どんな思いで、青雲高校のユニホームに袖を通した稜ちゃんたちを見ているんだろう。
想像すると胸が苦しい・・・・。
「だけど、少しの間だけでも稜とバッテリー組んでからは、俺はもう稜以外にボールを投げれる気がしねぇんだよ」