白球と最後の夏~クローバーの約束~
「・・・・だったら、ファーストでもセカンドでも・・・・サードだってできるじゃない」
その声があまりにも切なくて、わたしはいつの間にか岡田君の横顔を見上げて言っていた。
岡田君だって、本当は野球がしたくてしたくてたまらないんだ。
こうしてたくさんの人に応援される中を、稜ちゃんたちと肩を並べて歩きたいに決まっている。
視線を少し下にずらすと、右肘を掴む岡田君の左手に、青い血管の筋が浮いているのが見えた。
・・・・すごく悔しそう。
本当は、自分が稜ちゃんとバッテリーが組みたかったんだ。
わたしにも、その無念さが痛すぎるくらいに伝わってくる。
「はぁ・・・・。そんなポジションじゃ俺の名が廃るぜ、まったくよ」
わたしをチラッと見て、軽く笑い飛ばすように言う岡田君。
「でも・・・・」
「結局は俺の“プライド”ってヤツ。ピッチャーができないなら野球はしない、稜とバッテリーが組めなきゃ意味がない、そんなプライドがあんだよ。・・・・今でもな」
言葉に詰まったわたしにフッと笑って、そう言う。