白球と最後の夏~クローバーの約束~
そして、また稜ちゃんたちに視線を戻すと、こう続けた。
「稜はすげぇ奴だよ。前に組んだどのキャッチャーでも俺のコントロールの悪さを制御できなかったのに、稜は違った。・・・・花森も知ってんだろ?」
「うん───・・」
岡田君が肘を壊して投げられなくなる前、稜ちゃんと岡田君はバッテリーを組んでいた。
岡田君はもともとのピッチングには定評があって、それを買われて野球推薦で青雲に入ったんだ。
だけど、同時にコントロールの悪さが目立つ選手でもあった。
それは青雲に入っても変わらなくて、岡田君自身も相当悩んでいたことだった。
そんな岡田君を変えたのは稜ちゃんだった。
「信じて投げろ」が口癖で、練習が終わったあともよく2人で残って練習していた。
それが去年の夏までの2人、稜ちゃんと岡田君だった。
「あいつが言う“信じて投げろ”のおかげだよ、今まで楽しく野球ができたのは。それだけで俺は十分なくらい感謝してる」
「・・・・そっか。うん」
岡田君、そんなことを思ってたんだね・・・・。