白球と最後の夏~クローバーの約束~
稜ちゃんがグラウンドに現れたのを見ると、応援席からは吹奏楽部の演奏と応援団の太鼓の音。
それから、生徒たちが打ち鳴らすバン!バン!バン!というメガホンの音・・・・。
稜ちゃんのテーマ曲『狙い打ち』の演奏が始まった。
この音の中に、ココちゃんのトランペットの音色が混じっている。
会場入りの前にココちゃんと話す時間があって、そのときに言われたんだ。
「トランペット、あたし、死ぬ気で吹くから。だから百合も死ぬ気で応援しな? 何より百合の応援が一番の力になるんだからね!」
って。
わたしは応援することしかできないけど、それがココちゃんの言う通りに“何よりの力”になるのなら、わたしは声が枯れるまで応援するよ。
「絶対打って!」
わたしはベンチの柵に身を乗り出して声をふり絞った。
初戦で、しかも1番バッターで、どれだけの重圧を稜ちゃんは感じているんだろう・・・・。
「みんながついてるよ!」
もう一度、声をふり絞った。
「プレーボール!」
そのとき、試合が始まった。