白球と最後の夏~クローバーの約束~
稜ちゃんは、わたしの声なんて届かないくらいにバッティングに集中している。
バッターボックスの向かって左側・・・・いつもの定位置に立って、長身のピッチャーをもろともせずに立ち向かっている。
ギリッ!とバットを握って構えた稜ちゃんの腕は、ベンチからでも鍛えられた筋肉の筋がはっきり見えた。
夏の太陽に焼けた、太くて真っ黒くて、たくましい腕・・・・。
そんな姿に見とれていると、湘南ピッチャーがピッチング体勢に入った。
大きく振りかぶって・・・・!
どんな球種なんだろう。
初球から打つ気でいるのかな、稜ちゃん・・・・。
わたしが勝手にそう思いあぐねていると、高い位置から1球目が投げ込まれた!
ストレート!
そもそもの投げる高さ、それが違うから、ここから見ていても角度がすごくついている。
投げられたボールは、真っすぐにキャッチャーミットに吸い込まれていく。
カキーーーーーーンッ!
「・・・・ゴクッ」
わたしのカラカラに渇いた喉が音を立てて鳴った。