白球と最後の夏~クローバーの約束~
「キャーーッ!キャーーッ!」
たちまち、演奏もまだ序盤だった『狙い打ち』は大歓声に変わる。
メガホンを鳴らす音も太鼓の連打もの音も、ものすごい。
稜ちゃんが初球から勝負に出たボールは、翔南キャッチャーに届く前に見事にバットの芯で捉えられた。
鋭く打ち返された白球はピッチャーの頭上をはるか高く飛び、得点板のほうへぐんぐん吸い寄せられていく。
「・・・・ホームラン!」
誰が言ったのかも分からないよ、今の「・・・・ホームラン!」っていう台詞なんて。
もう、なにがなんだか・・・・!
そんなわたしのボルテージは、とたんに一気に跳ね上がる。
バットを放り投げて猛ダッシュで稜ちゃんが一塁に走っていく。
翔南ピッチャーは打たれたボールの軌道をただ目で追うだけ。
外野手は逆に、慌てて後ろに下がっていった。
きれいな放物線を描いて飛んでいくボールは、青空に溶けて一瞬キラッと光る。
ガンッ!
そして、再び目で捉えられるようになったボールは、気づけば得点板に当たって跳ね返っていた。