白球と最後の夏~クローバーの約束~
「オーッ!」
そう雄叫びを上げながら稜ちゃんがベンチに戻ってきた。
そんな稜ちゃんは、我先にと出迎えたチームメイトたちに頭や背中や腕や・・・・いろんなところをバシバシ叩かれる。
白い歯をキラリとのぞかせて、満面の笑みでその荒っぽい祝福に応える稜ちゃん。
そのまま、次々と差し出される手にパンパンパンパンッ!とテンポよくタッチしていく。
わたしはもう、声すら出なくて棒立ちだった。ただ、稜ちゃんの姿だけをずっと見つめていた。
こんなにも早く稜ちゃんのホームランが見られるとは思っていなかったから・・・・。
わたしの目には、優勝したわけでもないの涙が浮かんでいた。
稜ちゃんがまぶしいよ・・・・。
棒立ちのわたしの前まで来ると、稜ちゃんは興奮でほっぺを赤らめながらにっこりと微笑んだ。
「手、出して」
そして、そう言う稜ちゃん。
「え?」
わたしは涙を流さないように踏ん張るので精一杯で、胸の前で合わせた手に逆に力が入った。
すると、稜ちゃんの熱い手がわたしの手首をつかんだ。