白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
「ほれ、タッチ!」


パンッ!


ごくごく自然に稜ちゃんによって解かれた手に、今さっきホームランを打った手が重なった。


「打ったぜ、ホームラン」


そう言って、稜ちゃんは黒くてキラキラした目をわたしに向ける。


「うん・・・・見てたよ・・・・」


その目に射抜かれたわたしは、手に残る稜ちゃんの熱と黒い瞳に、同時に涙が頬を伝った。


「まだ泣くのは早いって。泣くときは決勝で勝ったときまで取っとけよ、マネージャー」

「うん・・・・そうだよね」


そう言って涙をふくと、稜ちゃんは満足そうに1回頷いて、わたしの前から離れていった。

そして、ベンチに入るやいなや、2番の井上君に声援を送りはじめた。


ココちゃん、見てくれたかな?

応援席でほかの部員たちと応援している岡田君も、ちゃんと見ていてくれたかな?

稜ちゃんのソロホームラン・・・・。

1回の表からエンジン全開だよ、稜ちゃんもみんなも!

今からこの調子ならコールドゲームだって夢じゃないよ!

本当にすごいよ・・・・。
 

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