白球と最後の夏~クローバーの約束~
ホームランの感動と、稜ちゃんの手のドキドキ・・・・。
それをいったん胸の奥にしまい込んで、わたしは再び試合に目を戻した。
カキンッ!
すると、耳に心地いい音が響く。
2番の井上君がちょうどヒットを打ったところだった。
セカンドが飛びついたんだけど、打球が速くて取り損ねていた。
すごい、井上君!
ここ2ヶ月ほどでずいぶん成長した井上君は、バッティングに磨きがかかった上、さらにメンタル面もぐんと強くなったんだ。
稜ちゃんがスタートダッシュをかけてくれたから、今のヒットにも自信と余裕があるように見えた。
「いいぞー、井上ー!」
「いいヒットだったぞー!」
ベンチから飛ぶそんな声に、一塁ベースに足をかけた井上君は自信満々に頷いていた。
井上君の成長スピードには目を見張るものがある。
好不調の波が消えて、もう“不動の2番”って感じ。
迷わず井上君をスタメンにした笹本先生も、こんなふうに成長した彼を安心して見ていられるんじゃないかな・・・・。
おめでとう、井上君っ!