白球と最後の夏~クローバーの約束~
お父さんに言わせれば、そういうことらしいんだけど。
酔っぱらったときの口癖なんだ。
わたしはそこまでは・・・・。
だけど、ここまで来たからには、勝って甲子園に行きたいと思う。
みんなと一緒に甲子園の土を踏みたいと思う・・・・。
試合会場は県営球場。
決勝戦を一目見ようと、大勢の観客たちが詰めかけている。
試合開始前だというのに、もう両校の応援合戦は試合中さながらのヒートアップ。
わたしたちは今、その声を聞きながら控え室で出番を待っている。
「お前たち、よくここまで勝ち進んできたな。決勝で戦えるのは、かれこれ20年ぶりだと聞いた」
“決勝”という大舞台を前にガタガタと震える選手もいる中、笹本先生が口を開いた。
「・・・・20年ぶり・・・・ですか?」
誰かがぽつりと言った。
だけど、極度の緊張のせいか、誰が言ったのかなんてみんな気にしていないようだった。
「・・・・そう、20年ぶりだ。20年前は惜しくも準優勝に終わって、甲子園には行けなかったそうだが」