白球と最後の夏~クローバーの約束~
先生も誰の声なのかには触れず、ゆっくりと全員を見渡しながらその問いかけに答えた。
部員たちもわたしも、否応なしにゴクッと喉が鳴る。
20年ぶりの決勝・・・・その歴史の重みが全身に降りかかる。
「だが、今年の野球部は前とは全く違う。長谷部をはじめとして、部の全員が甲子園という大きな夢の前にひるむことなく立ち向かってくれた。学校の誇りだ、お前らは」
先生は、そう言いながら力強い目で1人1人と目を合わせていく。
「さっきは20年ぶりだなんて言ったが、本当は何年ぶりかなんて大したことじゃない」
「「「・・・・」」」
「決勝まで勝ち進むことができた実力、気力、精神力、チームのまとまり・・・・西ノ宮にはない強さがお前たちにはある!」
「はいっ!」
稜ちゃんが、全身全霊の気迫を込めた声で返事を返した。
きつく握られた拳からは、湯気が出そうなほどの熱さが伝わってくる。
「はいっ!」
「はいっ!」
「はいっ!」
稜ちゃんに続けとばかりに、ほかの部員たちも返事に全身全霊の気迫を込める。