白球と最後の夏~クローバーの約束~
そして、選手たちの家族や、すでに敗れた他校の生徒たち・・・・。
その姿も一般の観客たちに混じって多数見受けられた。
これが“決勝”・・・・。
これが決勝というものなんだ。
わたしはもう、その雰囲気にかなり呑み込まれてしまっていた。
ベンチまでの短い距離をどう歩いたのかさえ分からないくらいに。
覚えているのは、キリッと引きしまったみんなの日に焼けた顔。
真っ白のユニホーム、自分の手に握っていたお守りの感触・・・・それくらい。
落ち着くほうが無理な話で、わたしはずっとソワソワしていた。
そんなとき───・・
「マネージャー、マネージャー」
わたしを呼ぶ声がした。
声がしたほうに顔を向けると、そこには稜ちゃんの姿。
「マネージャーが作ってくれたお守りのおかげでここまで来れた。みんな感謝してる」
ヨレヨレになったお守りを見せながら穏やかな口調で言った。
わたしは、もうその言葉だけで涙が込み上げる・・・・。
稜ちゃんと目を合わせたまま、何も言えなくなった。