白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
「だぁっ!今から泣くなってば!泣いてたらホームラン打つとこ見逃しちまうだろ?」

「・・・・うん」


だけどわたしは、もう涙が止められなくて・・・・。

なんとか“うん”と言ったけど、本当はそんなの絶対無理なんだ。

止められるものなら止めてよ、稜ちゃん・・・・。


「おいおい、試合前に泣かせんなよな〜、稜」


すると、どこからともなくそんな冷やかしの声が出る。

その声に顔を上げると、ベンチのみんながわたしたちを見てニヤニヤ・・・・。


「バッ・・・・ちがっ!お、お守りのお礼・・・・そうだよ、お前らも礼くらい言えよ・・・・!」


そう言う稜ちゃんは、思わず吹き出しちゃうくらいにあたふた。

言葉なんて、ちゃんと言えているようで言えていなかった。


「お礼ねぇ〜」

「本当にお礼かねぇ・・・・」

「違うこと言ってたんじゃないのかねぇ〜・・・・」


あたふたする稜ちゃんを面白がるように、みんなは口々にそんなことを言う。


「あ〜もーっ!いいからお前ら集中しろよ!決勝だぜ、決勝!」
 

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