白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
わたしは、お守りを握りしめながら大森君の第1球目を見守る。

あぁ・・・・。

ここに岡田君でもいれば、皮肉でもなんでもいいから会話で気も紛れるのに。

今日も岡田君は応援席。

1年生・2年生たちと一緒に、夏の太陽を体中に浴びながら応援しているんだ。


毎試合、毎試合、わたしばかりが記録員としてベンチに入っていたこの大会。

だからすごく申し訳なくて・・・・。


「明日の決勝は岡田君がベンチに入りなよ?」


昨日、そう言ったんだ、わたし。


「ベンチは花森のもんじゃん?」


だけど、ひょうひょうとした顔でそう返されて。

わたしに気を遣ってくれたのか、それとも記録員の仕事をしたくないのか・・・・。

それは分からないけど、だからわたしは、今日もこうしてベンチの中からみんなを見守っている。


「スタンドから見る試合はすっげーいいぞ? 俺の特等席だから、ベンチは花森に譲る」


なんて岡田君は言っていたけど、ベンチだって十分なくらいに特等席なのに・・・・。

そう思うんだけどな、わたし。
 

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