白球と最後の夏~クローバーの約束~
そんな回想をしている間に、試合は徐々に進んでいく。
西ノ宮の1番バッターが大歓声を受けながら打席に入っていた。
“西ノ宮”というチームは、誰が4番を打ってもおかしくないほど強いんだ。
決勝までの試合は、新聞や地元のニュースで見るかぎり、どれも危なげなく勝ち進んでいる。
攻撃力はもちろん、守備力だってファインプレーが続出だった。
この1番バッターだって、実力は半端じゃない。
稜ちゃんたち、初球から波に乗れるのかな・・・・。
1球目はストライクを取って!
わたしは祈るように青雲バッテリー見つめた。
心臓は口から飛び出てそこら辺を跳ね回っているかもしれない。
それくらい、わたしは自分の体の感覚がなくなっていた。
稜ちゃん!
大森君、みんな!
「花森、そんなに目をつぶっていたらスコアなんて書けないぞ? 決勝なんだ、しっかり目に焼き付けておけ」
笹本先生が言った。
極度の緊張で目をつぶってしまったわたしを見兼ねて、そう言葉をかけてくれたんだ。
「は・・・・い」