白球と最後の夏~クローバーの約束~
ブンッ!
西ノ宮バッターはわずかに振り遅れて空振り。
ストライクの赤いランプが1つ、電光掲示板に灯された。
この決勝でも、稜ちゃんが初球に選んだボールは大森君が得意としているストレートだった。
ほとんどの試合を1人で投げ抜いて疲れがピークなはずなのに、大森君のストレートは威力が全く衰えていない。
それどころか、今までの中で最高のストレート。コントロールも完璧で、スピードもすごかった。
わたしたち3年生にとっては、これが甲子園へのラストチャンス。
2年生の大森君は、また来年も挑戦できる。
だけど、今のストレートからは大森君の気持ちが・・・・。
“このチームで甲子園へ!”
それくらいの強い思いがひしひしと伝わってきた。
“先輩たちを甲子園へ!”
そんな声が聞こえてくるような、渾身のストレートだった。
バッターが構え直すと第2球。
今度は高めのストレート。
ブンッ!
すくうように振られたバットは、ボール軌道のだいぶ下・・・・15cmは下の空を切った。